盆栽づくりがさかんな国分寺町。楓(26)は推し活に夢中で恋愛に興味が無く、人前に出ることも苦手な自称“へたれ” 。母親はそんな娘が気掛かりでしかたない。ある日 世話好きな祖父が盆栽センターでフェスを開催することになる。楓は祖父を手伝う中、センターで研修中の井上陸と知り合う。フェス直前、祖父が倒れ、楓は急きょその代役をまかされる事に。小雨の中、フェスは幕を開けるが…。
高松市の郊外、鬼無・国分寺町は昔からの松盆栽の産地。農家では、庭先で盆栽を育てる光景が普通に見られます。 しかし近年、それを継いでいく人は少なくなっているような気がします。 そんな国分寺を舞台に、普通の三世代の家族の物語を作りました。 主人公は今どきの二十代の若い世代。恋愛や結婚にあまり興味がなく、自分の趣味に生きがいを感じています。 親世代は、「いったい子どもは結婚するのだろうか」とはがゆく、また心配にも思っています。 祖父母の世代は盆栽や人のつながりを大事に暮らしてきた、それが途切れてしまうのではと怒りを感じています。 この三世代がおりなすドタバタ劇を今風な趣味(アニメ、コスプレ)や音楽(ラップ)に包んでドラマを作りました。 つたない作品ですが、うれしいことに『さぬき映画祭2022』第6回シナリオコンクールの大賞をいただきました。 関係者のみなさまには感謝の念に堪えません。 美しい「高松盆栽」を背景に、ハートフルな楽しい作品を目指して スタッフ、キャスト一同『我張り』ます。 皆様のご指導、ご協力 よろしくお願いいたします。
『 シーン16 盆栽の郷・事務所 』
和泉達郎(53)が耕吉と楓を前に熱弁をふるっている。
和泉「高松市の鬼無地区から国分寺地区にかけて生産されている松盆栽の全国シェアは約8割を占めており、その歴史はおよそ200年も前から続いていると言われています。文化年間 1804年頃ですね、当時の愛好家が山野に自生する松を掘り、鉢植えに仕立てたのが始まりとされ その後、盆栽づくりは、農家の副業として周辺一帯に広がりをみせる中で、盆栽を専業とする農家も現れ、今日の隆盛を見るに至りました」
資料写真や盆栽神社などの風景をカットイン。
「樹形の美しさに加え、水はけのよい砂壌土で育った高松の松は『根腐れしにくく、傷まない』として定評があり、田園に松盆栽が広がる風景が独特です」
誇らしげに力説する和泉、次第にテンションが上がっていく。
「今では盆栽の世界的な愛好家の増加を受け、アジアはもとよりヨーロッパ、アメリカなどへも輸出されるようになってきました」「高松の盆栽は、雨が少なく温暖な瀬戸内地域の豊かな自然環境と、高い技術をもった盆栽作家の方たちによって守られてきた讃岐の伝統なのです!」
胸に光る「盆栽センター長 和泉」のネームプレート。
「おぉ~」っと、楓と耕吉小さく拍手している。
国分寺地区は、香川県のほぼ中央に位置し 江戸時代から続く松盆栽のメッカで全国シェアは8割を超えています。 特に『錦松』発祥の地としても有名。 紅ノ峰・黄ノ峰・青峰・黒峰・白峰山からなる五色台の南麓、四国霊場の全ての本尊を模った石造88体や 讃岐一と噂された音色の梵鐘(つりがね)が伝わる第八十番札所 國分寺の創建は古く万葉の時代を残し ユニークな盆栽神社や 町内を一望できる『如意輪寺公園』は本作でも象徴的なロケーションとして登場します。
鬼無地区は 高松市北西部に位置し、全域が高松平野の一部ですが、地区の北西側には標高364mの勝賀山が存在しており、かつて「勝賀城」があったこと等から地区のシンボルになりました。
その勝賀山は五色台へと連なり高松平野はここで終了。勝賀山山麓に沿うように渇水対策のため池が多数存在しているのも香川県の典型的な平野の特徴として面白いですね。桃太郎伝説の地の1つであり、袋山山麓には熊野権現桃太郎神社があります。